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大饅頭選手権の中で

長くなる事を残す場として

腕時計を選ぶ(下)

腕時計を選ぶ(上) - 大饅頭選手権の中で


タカシマヤの時計サロンで待ち合わせをしている時にふと、SEIKOのコーナーに足を向けた。
ガラスケースの中を眺める。
どれもまあ見た事あるチェック済みのやつだよね…と念のため確認するように次から次に目を這わせて行くと、その中の一本に目が止まった。その見慣れない腕時計はクラシカルなデザインで不思議な光り方をしていた。

[セイコー]SEIKO 腕時計 PRESAGE プレサージュ 琺瑯ダイヤル メカニカル 自動巻 (手巻つき) カーブサファイアガラス 日常生活用強化防水 (10気圧) SARW011 メンズ

セイコー プレサージュプレステージモデル。

立ったり屈んだりしながらじーっとその時計を見ていたら担当のお姉さまがケースから出して説明してくれた。
・文字盤がお鍋とかに使っているほうろうなんですよ
・たった一人の職人さんが1点1点うわぐすりを塗って作ります
・ちょうど入ってきたばっかりで、普通は注文しても2,3ヶ月待ちですね
・人気モデルで中々お店に入ってこないんですよ

調べてみるとセイコーが1913年に生み出した国産で最初の腕時計「ローレル」にも"ほうろう"の素材が使用され、100年経っても色褪せしていないとのこと。

ふむ。
僕が時計や少し高い買い物をする時には、その商品の品質や機能の他にその会社の歴史とかシリーズのコンセプトや商品の背景も決め手になったりするんだけどその点でもグッと来た。


あっと言う間に心は決まった。


心は決まったのだが、一生に一度の品。
他のお店で他の時計と出会って心変わりするような事がないかを確認する必要がある。
(迷える男女関係のようだ…)
その日は取り置きしてもらってタカシマヤを後にし、翌日他に行く予定だった百貨店や質屋を巡った。

何店舗を回ってもいくつの腕時計を見ても、プレサージュ以上にグッと来る時計には出会えなかった。
それどころか、彼女が行く先々であのプレサージュがあるかどうか店員さんに尋ねても、確かにどこにも置いておらず、あのモデルが本当に人気でタカシマヤでの出会いは特別なめぐり合わせによるものであったのだと一層プレサージュを求める思いが深まったのだった。


そして僕達はまたタカシマヤにやって来た。


取り置きしてもらったプレサージュを見せてもらう。やはり素晴らしい。よし、じゃあこれを買ってもらおうかな、と腹をくくろうとしたところで一つ気になった事があった。
この時計は婚約記念品として恋人から贈ってもらうものだ。そして二週間後には両家の顔合わせがありそこでのお披露目を控えている。


お祝い用の包装をしてもらえるのだろうか。
一緒にお披露目をする予定の指輪は宝飾店の好意で華やかな水引を装った桐の箱に飾られる。
もう一方の時計もそれと同じとまではいかなくてもそれなりに見劣りし過ぎない形で並べたいものである。
応対してくれた店員さんに尋ねた。(彼女が)


「贈答用の包装をしてもらうことはできますか?」

「簡単な熨斗を付けるだけになります」

「そうですか。お金がかかってもいいので水引をつけてもらえませんか?」


すると他の店員さんに聞いたり、電話をかけたりして調べてもらった結果、2500円くらいかかるとのこと。
対応は別のフロアのギフトカウンターで行うらしい…のだが少し歯切れが悪い。
専門外だからかな?と思ってそのギフトカウンターに行ってどんな感じになるか尋ねたが
そちらでもはっきりとしたサンプルやイメージはなく、金額だけ。


ここで僕らは少ししょぼんとした。


これまで見てきた時計サロンではグランドセイコーを始め、タグ・ホイヤーもベルアンドロスもオメガもきちっとした結納返し用の梱包を独自で用意していた。
それと同じものを違う時計で求めるのはちょっと違うのかもしれない。おそらくプレサージュはその用意がないラインナップだったのだろう。だけどそれでも、僕が一生に一度もらい、彼女が一生に一度贈ってくれる時計はもっと尊敬を持って扱われて欲しい。有償であってもいい、その選択肢が欲しい。


とぼとぼとギフトサロンから時計サロンに戻り、もう一度プレサージュを見せてもらう。
美しい。やっぱり欲しいな…。
今度応対してくれたのはおそらくそのコーナーの責任者のような人で、最初の店員さんが水引の事で相談をしていた人だった。念のため、その人に尋ねる。


「これ、水引は付けられないんですよね?」

「このプレサージュの箱は通常水引を用意しているものより大きいので入りませんが…  やってみますよ」

『おお…!』

「(水引を箱にあてがいながら)こんな感じになります」

『いいですね…!』


素晴らしい包装になる。
とてもうれしくて、僕らの気持ちは固まった。彼女は僕に尋ねる。


「じゃあ、もういいかな?」

「うん、これをく…  あ、これでお願いします


彼女は店員さんに言う。


これを下さい。」

「かしこまりました。」


こうして、僕らの腕時計探しは幕を下ろしたのだった。


ふふふ…
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ババーン!!
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ほうろうの穏やかな立体感がおわかりだろうか
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これから先、何本か気に入った時計を手に入れる事があるかもしれないが、この時計は一生で最も大切な時計になる。100年後も大事に使っていたいと思える腕時計を選ぶことが出来た。
ほうろうの文字盤を夜な夜な眺めながら、早く記念品の交換が終わればいいと
今はただそう思っている。
(早く身につけたい)




【エピローグ】
プレサージュを買う前に実は1つ買ってもらったものがある。
予算的に余裕があるからと、彼女の粋なはからいである。
機械式時計と言えば…



ワインディングマシーン!!
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セットすると、こう!
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動かすと、こう!
右回りと左回りを定期的に繰り返し、お好みでバックライトが点きます。
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彼女「両家顔合わせの会食で、テーブルにこれがのっかってクルクル回ってたらアホだよね!」
僕「せやな!」