大饅頭選手権の中で

長くなる事を残す場として

嗚呼、ITサービスマネージャ試験

高度試験の最後の午後II試験で、市内の専門学校の教室で自分がひり出した硬いうんちのような論文が心にこびり付いてた。

選択式の試験である午前Iと午前IIは自信はなかったものの自己採点の結果合格ラインの6割を大きく上回る点数を取っていた。

だけど全ての試験を終えて専門学校を後にする僕には合格の自信は皆無だった。午後IIの論文は指定の文字数をクリアしただけのひどい出来であった。例えるならダンゴムシのようなワラジムシ、ライスカレーを期待してのオリエンタルスープ、論文と見せかけてのトイレットペーパーなのである。

 


(オリエンタルスープはうすいカレー味がする根菜のスープなのだが、地元の小学校給食限定のものかもしれない。妻はその存在を知らなかった。)

 


試験のことはもう忘れてしまおう。そう思ってその晩は(妻の優しさもあり)自分の好きなメニューを好きなだけ食べたし、翌日もわざわざ隣県まで行ってハンバーグを食べてきた。相変わらずげんこつハンバーグは最高だった。

 


それでも頭の中は、高速のゆるいカーブを曲がりながら、サービスエリアでスマホをいじるたび、岩盤浴で熱い岩の上で汗を流しつつ、午後IIで書いたひどいうんちのことで頭がいっぱいなのであった。

そして今回の受験者の多くが論文で失敗していないかなーとか、奇跡的に採点者の人がうんち愛好家だったりしないだろうかという醜い願いが心をグルグルして女々しくて辛かった。

 


思えば僕がITゼネコンを形成するあるソフト会社に入ったばかりの頃、何をするにも自信がなかった。大学の学科は機械科だったし、たいしてパソコンも詳しくなかった。魔法のiらんどで作ったホームページを友達に見せてドヤドヤしていたチャーミングな青年だった。要するにこの道を志すのが遅かった。そんな自分がどうにかして自信を持つために受けた試験が基本情報処理技術者だった。青年は合格した時、これでようやくこの道を選んで良いと、お墨付きをもらったように思えて迷いが晴れたそうな。

 


あれから干支を一回りしたが手元にあるのは基本情報だけだ。

 


技術者としては中堅に差し掛かる。

転勤のない東京のソフト会社に入ったはずが、いつの間にかSIerになり、名古屋で暮らし、あるお客さんのところのシステムの保守ばかりを10年近くやってきた。前の会社にいた頃は開発の現場を転々とし、忙しくも自分のスキルが磨かれていくそんな感覚があったが、何年も同じシステムを見てくると繰り返しの日々に、ありがたいぬるま湯に、何も感じなくなった。

 


そして今年、その保守の仕事がようやく一段落し、次の仕事までの助走期間を過ごしていた(社内ニートとも言う)。テストを受けたのはそんな時だった。

これまでの自分の仕事はきっと少しはお客さんの役には立ったし、自分の会社にも貢献はしたのだと思う。そう信じたい。

だけど、自分自身にとって実りのある正しい時間だったのかと考えると自信が無かった。

 


ITサービスマネージャ試験を受験したのは自分のこの10年を何らかの形で認めて貰って、自分自身が納得して次の一歩を踏み出したかったからなのだと思う。

ヘルプで入ったジョブの客先で過ごす昼休み、電気が消され薄暗くなった執務エリアでIPAのWebページを開き結果を確認した。

信じられない二文字。あれほど渇望していた高度試験の合格。本当に嬉しくてこれまでにない達成感があった。愛好家の採点者さんには感謝してもしきれない。

 


その2日前に、僕は来年から九州の仕事になることを伝えられた。

 

 

どこに行ってもどんな仕事でも続ければきっと何かになる。

新しい街でも自分の仕事をしておいしいものを食べて奥さんと笑って過ごせればきっと自分の生活に納得できる。そう思えた。

 

 

 

はい。

前置きが長くなりましたが、せっかくなので体験記も書いておきたいと思います。

 


午前Ⅰ…78点。

午前Ⅱ…84点。

対策は以下のサイトに大変お世話になった。

https://itsiken.com/index.html

8年分の過去問を2回ずつ解いた。午前Ⅰは春秋問わずやり、かつ応用情報の午前と同じものが出るためそっちも5年分やった。内容を全て理解することはやめ、とにかく正しい選択肢を選べられるようになる事を意識して続けた。最終的にⅠもⅡも8割以上取れるようになった。同じ問題を何回もやればそりゃそうなる。そして、本番も過去問から多く出題されるので、それでいいと割り切った。

 


午後Ⅰ…78点。

午後は参考書を買って練習した。

参考書は午後対策だけで十分だと思う。僕は2年前の中古品の「専門知識+午後問題の重点対策」というものを使ったけど、とても参考になった。

午後は午前よりも狭い範囲を掘り下げる内容となる。午前対策では捨て置いたよくわからない言葉や内容はこの専門分野ではあってはならないと決意して理解するまで参考書を読みこんだ。過去問や問題集は確認のために少しやった程度。

 

午後Ⅱ…A判定。

論文が一番の難関。評価ポイントを押さえる論文の書き方を頭に叩き込んだ。

論文の題目の傾向はいくつかある。出てくるパターンごとに、どの仕事の経験を書くかをシミュレーションした。いや、厳密には経験していないパターンばかりだ。過去の仕事での出来事を記憶の中から引っ張り出して捻じ曲げ、脚色し、虚構を織り交ぜ論文に適合させる、その方針をパターンごとに決めておいた。

論文を書く練習は3回くらいしかしなかったが、当日はもっと練習しておけば良かったと思った。手が疲れて指が動かなくなる。途中間違って四百字ほど書き直したのが痛かった。必死で既定の文字数を書き切った。

 

 

 

傷つき悩める保守メンバ、サービスマネージャに幸多からんことを。