大饅頭選手権の中で

長くなる事を残す場として

マグロの魚影が飛ぶ感じ

彼女はマグロだ。
マグロといっても夜の営みで消極的な様子を指したいわけではなく、僕が比喩したいのは泳ぎ続けないと死んでしまう性質だ。彼女の場合、情報を常に取り込み続けないと気が済まない質なのだ。
新しく訪れた居酒屋で、ホテルで、駅で、何かのパンフレットがあれば二三手に取り空いた時間に叩き込んでいるのを目にする。もしくは彼女のiPhoneを使ってあれこれインターネットで情報を取得している事がよくある。僕と彼女がデートしはじめてしばらく、僕との会話を話し半分にしiPhoneを操作しているのを見ると「彼女を楽しませてあげれていないのではないか。そのせいで誰か他の男友達とやりとりしているのではないか」と不安になり勘ぐったりもしたが、たいていその考えはやがて間違っているとわかる。操作し終えた彼女は得た情報を有益な形で提供してくれるからだ。それは居酒屋のコースであったり、ホテルの館内情報や、お得な電車の切符だったり、臨機応変なソリューションだ。


彼女は一緒に居る時にたまに急に眠り出す時がある。上の文章を書いた時もみなとみらいの駅の待ち合わせのベンチの膝の上でスヤスヤしていた。
起きている時は良いパフォーマンスを発揮するけど唐突に眠る。飛影みたいだとも思った。

ブラックベリーが好きだった

2009年の6月、僕は府中のdocomoショップにいた。
当時はスマートフォンが徐々に一般層に浸透してきた頃。
WWDCではiPhoneの3GSが発表され、ソフトバンクが徐々に存在感を増し、その一方でauはまだ読書ケータイやiidaに力を注いでいた。(この少し後に出遅れを認め、Android auを名乗る事になる)


そんな中我らがdocomoも東芝からT-01AというWindows端末を出すという事で、どれどれ、ここらで僕もビッグなウェーブに乗り遅れる前にスマホに変えてみようかなと、長年連れ添ったけど前日に急にぶっ壊れて液晶が映らなくなったFOMA N905iμを片手にケヤキ並木の自動ドアをくぐったのだ。


この時点での本命はT-01A。対抗馬としてBlackberryBold(9000)を検討していた。
しかしお店を出た時僕はBlackberryを手にしていた。

決め手はハードキーのQwertyキーボードとカッコよさだったように思う。

学生の頃には一日に100通も200通もメールをしていた僕だったが社会人になって時間に追われ心の弾力を失い… ケータイでメールをやりとりするのが億劫になっていた。めんどうくさかった。「おとこのこ」を打つのに25回もボタン押す事に耐えられる体ではなくなっていたのだ。それだったら社会生活の中でどんどん早くなるローマ字打ちの方が楽だし早いはず。また、blackberryって「デキる」「シブい」男性が使ってそう…まあ僕にぴったり!と思った。割とポジティブな26歳だった。


それから4年と数ヶ月。
20代の後半を、僕はブラックベリーと過ごした。
名古屋で矢場とん食べてる時も、四日市でキャバクラに連れて行かれた時も、品川のDEAN&DELUCAの前を素通りする時も。
ずっと一緒に過ごしてきた事はただの惰性じゃない。ちゃんと理由があった。良いことも悪いこともあったけど、青春の後半をともに過ごした大好きなブラックベリーの事をちゃんと書いておきたい。

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